精進料理コラムとレシピ「母の考えたすいとん」

泉竹さんの精進料理コラム:
母の考えたすいとん

母の考えたすいとん

精進料理は五味・五色・五法を基本に調理されます。と言いますとこの野菜は五味の中ではどの味に属するのですか?

大根や慈姑をくちなしで黄色に染めたらどの色と考えるのですか?等の質問を受けます。

私自身も若い修行時代に師匠に伺いました。師匠は精進料理の基本は「心」と言うだけでした。

私としては表や図解の様に味はこの種類に属し色はこの色と明確に示して頂きたく不満そうな顔をしていると

師匠は宗時代の「世説新語」と言う書物に「まさによく此人を料理すべし」とある。意味は真心こめて世話をしなさいと言う事だよ言われました。

当時は理解できずに煙に巻かれているようでした。

昨年久しぶりに実家に帰ると母がすいとんを作っていました。そのすいとんを父が食べているのでびっくりしました。

父は悲惨な戦争時代に少年期を過ごした経験がもとで、すいとんが大嫌いです。一度も食べている所を見たことがありません。

その父が一昨年の東日本大震災の後、母にすいとんを作る様に言って食べるようになりました。

父は食べながら私に母のすいとんは「粉臭くないんだ」と言います。私が今は小麦粉は臭くないよと考えていると、母が小麦粉を豆乳で練っているからと言います。

77歳の母に聞くと父に少しでも美味しく食べてほしくて自分で考えたと言います。

著名な禅僧のお話に「人間の誠実さと親切とカンのよさが最もよくあらわれるのが料理である。味は人なり、料理技術以上にその人となりが味を作る。」

50歳を過ぎて母に料理の「心」を教えて頂きました。感謝です。

精進料理レシピ:母の考えたすいとん

材料(4人前)

母の考えたすいとん

  • 小麦粉(150g)
  • 豆乳(150g)
  • 大根(200g)
  • 人参(200g)
  • 椎茸(4個)
  • ごぼう(100g)
  • 三つ葉(少々)
  • 精進だし汁(500cc)
  • 塩(小さじ1)
  • しょうゆ(少々)

つくりかた

母の考えたすいとん

  1. 大根と人参は皮をむき長さ3センチ程の薄い短冊に切りそろえ水にさらします。
  2. ごぼうは笹がきにして水にさらしておきます。
  3. 椎茸は薄くスライスします。
  4. 三つ葉は3センチ位に切りそろえておきます。
  5. 小麦粉に少しづづ豆乳を入れて塊が出来ない様に丁寧に練って耳たぶより少し柔らかい位にします。
  6. 精進だしを入れた鍋に、1と2を入れて火にかけます。(水は捨てる)
  7. 沸き上がったら火を中火にして、5の小麦粉を一口位の大きさに薄く引きちぎりながら鍋に入れます。
  8. 小麦粉が鍋の上に浮いてきたら弱火にして、あくをすくい取り、刻んだ椎茸を入れます。
  9. 塩としょうゆを入れて味を調え、切っておいた三つ葉を入れて出来上がり。

謝辞

この精進レシピおよびコラムは、「泉竹」からご提供頂いております。
http://www.izuchiku.jp/