酉年ももうすぐ終わり。
当たり前ですが、次の酉年は12年後。
ということで、酉年のうちにぜひ紹介しておきたい本があったので、今回は
そのことについて書きたいと思います。
その本のタイトルは、ずばり『鳥の仏教』といいます。
高名な人類学社でいらっしゃる中沢新一さんが書かれたもので、チベットに
伝わる同名の経典を訳したものだそう。
むかしむかし、インドとチベットにはさまれたとある場所に、豊かな森に
かこまれた美しく素晴らしい山がありました。そしてそこには、多くの鳥たちが
楽しく暮らしていました。
あるとき、この山に一羽のカッコウが降り立ち、大きな白檀の木の下に座ると
深い瞑想をはじめます。
このカッコウは、鳥たちに正しい仏教の教えを説こうと思い立った観音さまが
姿をかえたものだったのです……。
という場面からはじまる、まるで童話のようなおはなしなのですが、瞑想から
さめたカッコウ(つまり観音さま)が鳥たちに話をする段になると、その内容は
深く仏教の本質を説いたものになります。
カッコウは集まった鳥たちに仏教の真理を説き、それを受けたハゲワシ、ツル、
カラスやフクロウといったさまざまな鳥たちの口を通して、「どう生きることが正しいのか」
「どうすれば正しく生きることができるのか」といった深い内容が次々に語られてゆくのです。
と書くといかにも小難しく思えてしまうかもしれませんが、実物を読んでもらえれば
すぐにわかるのですが、その内容はとても易しい言葉で読みやすく書かれています。
もともと『鳥の仏教』は、チベットで幼い僧侶や庶民が仏教を学ぶ入門書のように
読まれていたのだそうです。つまり、一般庶民にもわかりやすく、仏教のエッセンスを
抽出したお経だということ。
日本語に訳されたこの本も文庫本で100ページほどしかありません。それでいて
その中身は、何度読み返しても新たな発見があるような、深いものなのです。
百聞は一見にしかず。下手に内容を要約するよりも実際に手に取り、読んでみるのが
一番だと思いますので、興味をもった方はぜひ本屋で、あるいは図書館で探してみてください。
表紙や挿絵につかわれている鳥の絵もとても美しく、見応えがありますよ。