一年に一度、年末に大掃除をするのは、日頃お世話になっている家や
建物への感謝のきもちの表現です。
また「あらゆる場所に仏が宿る」という仏教の思想からいえば、仏さまへの
感謝でもあり、仏の道に近づく第一歩でもあります。
実際に、仏典には「掃除で悟りを開いた」という人物がいます。
それはお釈迦さまと同時代の、周利槃特(しゅりはんどく)というお方。
この方、あまり記憶力のよいほうではなく、お釈迦さまの教えを受けたいと
入門したものの、何ヶ月たってもそのおことばのひとつも暗記することができ
なかったそうです。
これではとても教団のレベルについていくことはできない、と仲間から追い
出されそうになるのですが、その時お釈迦さまは周梨槃特に一本のほうきを与え、
「ちりを払い、垢を除きなさい」
と、ただそれだけをお伝えになりました。
もしかしたら、まわりからはお釈迦さまが哀れみに、せめてもと掃除の仕事を
与えた、とみえたかもしれません。
しかし周梨槃特はこれ以後、お釈迦さまから授かった
「ちりを払い、垢を除く」
ということばを唱えながら、ひたすら掃除に打ち込みます。
そしてある日、周梨槃特は突然気が付いたのです。
ちりとは何か。垢とはなにか。
この世界で汚れているのは身のまわりだけではない。
人間の、心のうちがもっとも汚れているのではないか。
それが、お釈迦さまの真の教えであったと理解した周梨槃特は、あらためて
修行に励み、ついに悟りを開いたと言います。
たかが掃除、されど掃除。
節分までは、どうか断捨離を・・・。