いまの日本では、中秋は夜にお月見を楽しむ日くらいの扱いですが、
中国や台湾では一年のうち特に重要な祭日のひとつとして大切にされています。
台湾では中秋の日は公的な休日になるそうですよ。
さて、中秋の名月をすぎると、暦の上では秋の後半戦に突入ということ。
暗くなるのもずいぶん早くなりました。
まさに「秋の夜長」。
夜長は「よなが」と読みますが、文字をひっくりかえして「長夜」としても
同じ意味の「ながよ」という言葉になります。
ところが、長夜を「ちょうや」と読むと、これは仏教にも関わりの深いまったく
別のことばになってしまいます。
長夜とは何を意味するでしょう?
長い夜…いつまでも朝にならない夜…永遠の夜…。
ということで、長夜には「亡くなって埋葬されること」そこからさら
発展して「死後の世界」という意味もあるのです。
さらに想像をひろげてみましょう。
暗い夜、長い夜というとどんな世界をイメージしますか?
寂しい、心細い、明かりがほしい。早く朝がきてほしい…。
そんなところでしょうか。
仏教用語では、悟りの境地に達せないこと、煩悩にとらわれて仏様の教えに
たどりつけない状態にあることを、長い夜のイメージに重ねて
「無明長夜(むみょうじょうや)」と呼ぶのです。
わたしたち人間は、さまざまなしがらみや、こだわりにとらわれていつも
無明長夜を、秋の夜長を明かりもなくさまよっているような状態にあります。
中秋の名月のように清冽な光で闇を払い、正しい道へと導いてくださる存在が、
仏さまなのです。
秋の夜長に、ほんの少しだけ、仏さまの教えについて思いをめぐらせてみませんか?
お月様の光のように、人生にもそっと進むべき道を指し示してくださることでしょう。