歌舞伎と僧侶


11月というと、歌舞伎界では毎年恒例の「吉例顔見世興行」が行われます。歌舞伎の年中行事で一番大切にされているのがこの顔見世興行で、11月は歌舞伎界の正月といわれているくらい。

江戸時代、歌舞伎役者は11月から翌年10月までの一年契約で座元に雇われることが多く、11月の舞台は向こう一年間の役者のお披露目、文字どおり「顔見世」の場だった伝統が受け継がれているのだそうです。

東京の新歌舞伎座ができてから3年もたちますね。今年の顔見世興行は8代目中村芝翫の襲名披露公演でもあるので、おめでたさも2倍3倍、というところでしょうか。

さて、歌舞伎の主人公というと武士や町人が多いのですが、お坊さんが主役や重要な役回りになる演目も意外にたくさんあります。

一番の有名どころは「俊寛」(写真)。

打倒平家の密議「鹿ケ谷の陰謀」に加わったことが露見して、薩摩の鬼界ヶ島に流刑となってしまった俊寛僧都を主役にした演目で、一緒に流された人々が赦免されて京に戻るのに、一人だけ許されず島に取り残される悲劇のシーンが有名ですね。

御数寄屋坊主の河内山宗春が主役になる「天衣紛上野初花」も人気の演目。(これで「くもにまごううえののはつはな」と読みます…)

将軍のお側仕えとしてやりたい放題の悪事を働く河内山宗春が、上野の輪王寺宮の使いと身分を偽って大名を脅迫する…というとんでもないストーリーですが、ウソがバレた宗春が開き直って啖呵を切るシーンは初演時から大人気になりました。

(もっとも御数寄屋坊主は身分上坊主の格好をしているだけで、本当の僧侶ではないのですが…)

考えてみれば、「勧進帳」で有名な歌舞伎の大スター・武蔵坊弁慶も比叡山の僧兵(武装した僧侶)。

意外に多くのお坊さんが歌舞伎のなかで活躍しているんですね。

 

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