あるお寺におじゃましたとき、通された客間に
大きな書の額がかかっていました。
その額をよく見ると余白部分に無数の墨のシミが
散らばっているのです。不思議に思って住職さんに
訪ねると、その昔に偉いお坊さんをお招きしたときに
記念に書いてもらったといいます。
そのお坊さんは、たっぷりと墨をつけた筆を豪快に振り回す
ので、墨があちこちに飛び散ってしまったらしい。
でも、そんなことは全然気にしないお坊さんだったとか。
そういわれると点々と飛び散ったシミは紙面に動きを与え
何ともいえない雰囲気をかもし出しているように感じる。
私たちの一生の間にも、いろいろなシミがつきます。病気や
ケガ、思い出したくないような失敗や悲しく辛い出来事も
あるかもしれません。
それらを失敗として悲観するのではなくて、そんな出来事も
二度と同じような過ちをしないためにもすべて必要なこと
だったと・・・。
あるいは自分が成長するために与えられた絶好のチャンスだと
受け止め、より大きな幸せへと転じて行くのが仏さまの心にかなう
生き方だと和尚は思うのです。