円空という仏師を知っていますか?
江戸時代の初め、寛永年間に岐阜県で生まれた円空は、
僧侶として日本全国を行脚しながら多くの仏像を造っています。
その数はなんと、12万体。60年余りの生涯で単純計算すると、
年間2000体ほどを造っていたことになります。すごいですね・・・。
鉈彫りと呼ばれる木の肌合いを生かした独特の手法と、その優しげな
表情から、円空仏のファンになる人も多いです。
岐阜県や愛知県には今でも多くの円空仏が残っていますが、
東京都内では博物館や美術館の展示ぐらいしか、拝む機会が
ありません・・・。
でも、お盆の棚経の時に偶然みつけた都内で唯一、円空仏を
本尊としているお堂があったのです。
御開帳も毎月行われて、仏さまを間近に拝むことができるみたい!
そのお堂は、西武新宿線の中井駅や、地下鉄大江戸線の落合南長崎駅
から歩いて10分足らずの新宿区中落合の住宅街にあり、
「中井出世不動尊」と呼ばれています。
狭い道路に面して建つお堂は、いかにも「円空のお堂」といった感じの
雰囲気です。
地域の人たちでつくる講がお世話をしていて、境内はきれいに整備されています。
本尊のお不動さまは高さ1.3メートルほどの、なかなか堂々としたものです。
もともと愛知県のお寺にあったもので、江戸時代後期にこの地に移された
のだとか。円空仏としては都内で唯一の発見例で、脇侍の童子像2体と併せて
区の文化財に指定されています。
「多くの人が身近に拝んでほしい」という思いから、12万体もの
仏像を造った円空。
地域の人によって、都内の住宅街の小さなお堂でずっと大切にされてきました。
御開帳は毎月28日の午後1時から、わずかな時間に限って行われます。
一度足を運んで、都内唯一の円空仏の本尊を拝んでみてはいかがでしょう。
仏さまの表情のように、やさしい気持ちになれるかもしれませんよ。