木の葉に念仏



東京の谷中墓地にある徳川第12代将軍家慶の正室であった
浄観院さまの墓から、「南無阿弥陀仏」と墨書された大量の
シキミの葉が見つかったといいます。

シキミは、漢字では「樒」と書き、漢字の雰囲気でもわかるように
密教系の儀式に使われ、また仏前に供える木として「仏前花」とも
呼ばれています。

その匂いは、独特の香りがあってお香の原料にもなります。

でも、有毒植物で、特に「実」は、非常に強い毒性があるので、
「悪しき実」ともいわれ、その「あ」が取れてシキミと呼ばれたとも
言われています。

そんな二つの顔を持つ花なので、動物が墓を掘り起こさないために
植えられたり、副葬品として納められたりします。

死臭も消すほど強い匂いを放つため、そのような用途にも使われて
いたのでしょう。

いままでも、将軍などの高い地位にいた方の墓から発掘
されていたのですが、そのほとんどは臭い消しのため、
お香の代わりに入れられていたと考えられていたので処分
されていたのです。

しかし、今回、よく調査してみると、そこに念仏が書かれて
いたことがわかりました。

おそらく江戸城大奥の女性たちが、正室の成仏を願って
書いたのではと言われます。

一人一人が一枚一枚、思いをこめて阿弥陀さまの仏名を
書き、棺に投げ入れたという、その思いを感じると、
江戸の昔にタイムスリップした感じですね。

ちなみに、樒(シキミ)と榊(サカキ)は別物で、榊は
つばき科、樒はモクレン科の常緑小高木で、同じ花を
咲かせます。

葉っぱをよく観察すると、榊の枝は、平面的に葉がついて
いますが、樒は立体的になっているので違いがわかります。

PS:
絵手紙は、早苗先生からのお手紙です。

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木の葉に念仏 への6件のフィードバック

  1. kouru のコメント:

    興味深いお話です。
    私には初めて耳にしたお話でとっても興味深く拝読させて頂きました。身近に目にしている物が当たり前のようで、それ以上の興味を持たなかったからかもしれません、一つ学ばせて頂きました。有難うございます(=^・^=)

  2. 和尚 のコメント:

    kouruさま
    そうねんですよ。「念仏樒」と名付けられた
    みたいです。造語なので辞書にもでていません。

    いまの人たちは、できあがったものを利用して
    いますが、なんか、昔の人は、とても工夫が
    あったように思います。

  3. kotobuki のコメント:

    分かります!
    あたしもよく母にポンタ(あたしの愛犬)が樒を間違えて食べたら死ぬから近寄らせないようにと言われてました。

  4. 和尚 のコメント:

    kotobukiさま
    そうなんですか・・・。
    食べたことはないけれど、ワンちゃんには
    分別できる本能があるんじゃないかしら?

  5. e.t. のコメント:

    38年前にも
    はじめまして、「念仏シキミ」を検索していてここにたどり着きました。
    昨日2009年5月1日の読売新聞によりますと、38年前に解剖学教室に所属していた歯科医が、越前松平家の生母の墓に念仏シキミを発見していたそうです。
    しかも将軍の正室が埋葬された時より113年も前に埋葬されたそうです。少なくとも大名クラス以上の葬送慣習にあったことが伺われ興味深いですね。
    新宿区立新宿歴史博物館に寄贈され1994年の同館の研究紀要に紹介されたそうですが、見過ごされたのですね。

  6. 和尚 のコメント:

    e.tさま
    へぇ~~そうなんですか・・・。
    最近、新聞を読まないので、ご案内頂いて
    助かります。調べてみますね。

    その当時、思いを託するのに一番手頃で
    「ありがたいもの」だったんでしょうね。

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