1年の半分が終わりますね。
ちょうど6月の終わりと言うことで覚えているのですが
629年に国禁を犯した僧がいました。
彼の名前は、玄奘三蔵といい、あの西遊記で有名な中国の
お坊さんです。
玄奘は、仏典の研究には原典による他ないと、また同時に
仏跡の巡礼を志しインドに向かったのです。
当時の唐という国は、国ができたばかりで政情も不安定だったので
外国へ行く事は固く禁じられていました。
しかし玄奘は、「信」をもって法律を破ってまでも仏の道を
求めようとしたのです。
追手の目を逃れるため、旅慣れた商人に道案内をしてもらう
ことにしましたが・・・石磐陀というその旅商人、ある月夜の晩に、
刀を抜いて、なにか良からぬ雰囲気を出していました。
玄奘は、ふと目を覚まし、その光景を見て、静かにお経を
唱えたのです。するとその商人は、また刀を鞘に戻して、
眠りました。
歴史小説の大家として名高い陳舜臣は、この夜のことを、
こう推理しています。
恐らく石磐陀は、国禁を犯すことに恐れを為して、玄奘を
殺して逃げようとしたのでしょう。
しかし、玄奘の唱える経文に、ふと我に返り、このままでは
国禁は、犯さないかわりに殺人を犯して、結局は犯罪者になって
しまうことに気付いたのでしょう・・・。
翌日、商人は、丁寧に玄奘に別れを告げて、戻って行きました。
その後、玄奘三造は十数年かけて中国に戻り、たくさんの経文を
翻訳したのです。
「仏の力」が、どこかで何かを守ってくれているのかも
しれませんね。