エンバーミング



エンバーミングという遺体を保存処理する技術がある。

キリスト教による遺体の復活信仰や、そのための土葬の
風習が多い欧米では、遺体からの感染症を防止する
目的や国土が広いための長時間の保存輸送が、求めら
れるからだ。

あるいは事故や闘病生活で元気だったころの面影が
なくなってしまうこともあり、生前のお姿に復元する
こともできる技術だ。

日本でも年間1万くらいのエンバーミングが行われて
いるようだが、その方法は、腹部に穴を開け、そこから
体液や腐敗を起こす原因となる消化器内の残存物を吸引して
除去する。

同時に静脈より血液を排出して、遺体の頸部などから体内に
防腐剤を注入するのだ。

そして全身を洗浄し、遺族より依頼のあった服を着せ、
お顔を整えて納棺する。

死後硬直もさほどしないし、ロシアのレーニンの遺体は、
いまでも防腐剤の入れ替えによって、生きているかのように
保存されている。

和尚は、そのエンバーミングの場に立ち会ったことがあるが、
元々欧米の合理主義的な「死んだら物」という感覚で、決して
お奨めはしない。お顔が綺麗になったとはいえ、亡くなった
あとでも、さらに体を苦しめ血液を抜きとったり、体内に
防腐剤を入れたりすることにも抵抗のある方はいるだろう。

葬儀という短い時間の中で、大きな感情的な選択を迫られ、
すばらしい方法のように思われるかもしれない。

しかしエンバーミングは、医学知識が必要なのに、企業内の
認定資格があればできるし、遺体の処置に関する方法についても
規定や法的規制もない状態だ。

20万円くらいの金額がかかり、営利追求のために知識がない
人が行ったり、抜き取った血などを下水道に流してしまったり
生前の顔の復元も容姿が大きく変わって裁判になるケースも
あるという。

いずれ人間は死を迎える。
「ありのまま」で良いということか?

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エンバーミング への4件のフィードバック

  1. さち のコメント:

    びっくりでした
    親戚の従兄弟が海外で亡くなりエンバーミングを
    していただきました。そうしないと遺体のままで
    飛行機で運んでくれないそうです。

    お年寄りのご両親がどうしても生前の姿でお別れしたいという希望があったのです。

    でもお顔は、海外のお化粧というか美意識の違いか
    貴公子のような感じで、ちょっと??でした。
    なかなか難しい問題ですね。

  2. 和尚 のコメント:

    さちさま
    貴公子ですか・・。何かわかるような気がします。

    葬儀は、普段私たちが考えるより微妙な問題を
    短時間に決断しなければなりません。

    かといって用意周到に決めごとをしておいても
    いろいろな問題を生じけねません。
    軽い気持ちで希望したことが、残された方の
    精神的な負担になることもありますね。

  3. 通りすがり のコメント:

    Unknown
    はじめまして。
    たまたま検索で引っかかり、立ち寄らせて頂いた者です。
    エンバーミングに関わる職業をしております。
    だいぶ古い記事ですが、気になる点がありましたので
    憚りながらコメントさせて頂きます。

    まず、血液を下水道に流す事はありえません。病院と同じように感染性廃棄物として厳正な管理の上で処理しています。
    次に、裁判関連ですが、私も都市伝説的にそのような話を聴きますが、他業者に訊いても確認できたことはありません。
    ただ、エンバーミングを死体損壊罪として訴えた政治結社の方が敗訴された例は事実として存じております。
    私は、エンバーミングに関して賛否両論あって当然ですし、皆様にお奨めしたいとも思っていません。
    宗教者の方ともお話させて頂く機会がありますが、和尚様がよくお調べにならず、主観的な記事を書かれている事を残念に思いました。

  4. 和尚 のコメント:

    通りすがりさま
    ご指摘ありがとうございます。

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