千の風になって



ご先祖さまに最後のお食事を差し上げて
墓地までお見送りしました。

そのあとで母は、精霊棚に手を合わせ、お線香を
あげてチ~ンチ~ンと金を鳴らします。

あら?仏さまをお送りしたはずなのに「なぜ」??
ご先祖さまは、どこにいらっしゃるの??

折しも「千の風になって」という歌が大ヒットして
CDは100万枚に達する勢いだといいます。
作者不詳の英語詩を作家の新井満さんが翻訳し、
曲をつけテノール歌手の秋川雅史さんが歌って
います。

『千の風になって』
   
 私のお墓の前で
 泣かないでください
 そこに私はいません
 眠ってなんかいません

 千の風に
 千の風になって
 あの大きな空を
 吹き渡っています
 秋には光になって 
 畑にふりそそぐ
 冬にはダイヤのように 
 きらめく雪になる
 朝は鳥になって 
 あなたを目覚めさせる
 夜は星になって 
 あなたを見守る

 私のお墓の前で 
 泣かないで下さい
 そこに私はいません 
 死んでなんかいません

 千の風に
 千の風になって
 あの大きな空を
 吹き渡っています

 千の風に
 千の風になって
 あの大きな空を
 吹き渡っています

 あの大きな空を
 吹き渡っています

死んだ人が残された人に、私はお墓にはいませんよ・・・。
風になり、時には光、雪、鳥、星にも形を変えて
あなたのそばにいます・・・と歌うわけです。

「なんだ!!お墓にはいないて言うのだから、これまで
お墓参りして馬鹿みたい・・・」
「これで、お墓参りをしない良い口実ができた・・・」
なんて思う方もいるのでは・・・?

何事でも、ちょっとマスコミで取り上げられ流行歌に
なったから、それがあたかも「正しいこと」と、思って
しまうことはとても危険です。

しかし、この歌の「亡くなった精霊が万物に宿る」という
アニミズム的な感覚は、身近な方々を亡くした人々の心を
癒す歌として、ヒットする理由も理解できます。

命の形を変えて「いつもあなたの側にいて見守っているから、
早く元気になってね・・・」そんな励ましの歌を、叙情的に
表現しただけのことだと思いますが、なかには賛否両論、
社会的な現象にもなっているようで・・・。

朝日新聞の「千の風なぜヒット」と題する記事には、
「日本人が共有してきた仏教的な死生観とは異なると
違和感を表明する仏教者もいる」と書かれています。

つまり、わかりやすく言えば、「お墓参りにこなくなって、
しまうので、困った歌だ。それは寺院運営に影響を及ぼす」
と、違和感を持っている仏教者?僧侶?がいるということ
です。

確かにお墓には、遺骨が埋葬されているので、その場所に
亡くなられた方がいて、その遺骨そのものが亡くなった方の
「証」として思いがこめられるので、お墓をさすったり、
墓前で泣いている方もたくさんおられます。

しかし本来お墓は、そこに亡くなった方の魂があるわけでは
なくて、五重塔に代表されるように、生きている私たちが、
亡くなった方のために仏塔建立の「功徳」を、ささげる
ためのものです。

そして、日々の生活の中で得た「功徳」を、自分のもの
だけにしないで、向こうにいるご先祖へ廻す、つまり
廻向」する場所として「お墓参り」も重要なことです。

ならばお墓でなくても、散骨でも良いではないかと思いま
すが、人間は形がないと、なかなか思いがこめられない
ようです。

その時には感情も高ぶっていますから、何がなんでも散骨と
考えがちですが、心が落ち着いてくると、海や山という
あまりのグランドの広さに、思いがこめにくいのも事実な
ようです。

最近では、遺骨からダイヤモンドを作ることもできて
ペンダント等にすることもできる時代です。しかし、
これもその方にとってみれば思いをこめられる重要な
ものかもしれませんが、お孫さんの時代などに代が変わって
しまえば、残された家族に不要な心配をかける物と
なってしまいます。

遺骨を納められて、しっかりと「真心」を伝えられて
「廻向」できる場所。それがお墓ということになります。

「私に会いたければ遍照金剛と呼ぶがよい」とは、お大師様
の言葉。

きっとカードのように「合掌」で、暗証番号のように
「経文」や「真言」、「戒名」などを、お唱えすれば、
ご先祖さまはいつでもお側にいてくださるのでしょうね。

母はそんな思いで仏壇に手をあわせ、毎朝墓前で廻向をして
おります。

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千の風になって への2件のフィードバック

  1. さち のコメント:

    なるほどm(__)m
    いままで何となくモヤモヤしていた事がハッキリとしてきました。
    亡くなった母を身近に感じながら、良いお墓参りができそうです。
    ありがとうございます。

  2. 和尚 のコメント:

    さちさま
    あ~っ・・よくわかりませんが、
    そうなんですか・・・
    「無明」から抜け出ると、気分もさわやかに
    なりますね

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